令和8年(2026)9月28日(月)  旧暦8月18日 先勝
今朝の撮影 Data
Hasselblad X2DII  4/28V 2,5/55V
現像 Adobe Photoshop Lightroom CC
撮影枚数 XX枚
- 北の地を 七年曳きし老兵に 汽笛なけれど ありがとう言う -

 今朝は、富良野リゾートオリカにて朝を迎えました。
 旅先では不思議なもので、いつもより遅くまで寝ていても誰にも叱られないというのに、あほまろの身体には浅草の早朝散歩時計がしっかり組み込まれているようで、今朝も日の出よりずっと前に目が覚めてしまいましたよ。
 せっかくなので、そのまま外へ出て、まだ眠りの中にある富良野の朝を歩いてみることにしました。

 浅草なら、雷門があって、仲見世があって、観音さまがあって、そしてビクトリー君たちが待っている時間です。しかし、ここには雷門も鳩もありません。その代わり、目の前にはどこまでも広がる北海道の大地と、その向こうに大雪山系や十勝岳連峰の山々が横たわっておりました。

 現在、十勝岳では火山活動が活発な状態にあり、噴火警戒レベル3「入山規制」が続いております。
 もちろん、あほまろが泊まっている場所は火口から十分に離れておりますので、普通に滞在しているぶんには心配するような場所ではありません。それでも遠くの山から立ち上る噴煙を眺めていると、北海道の大地が決して眠っているわけではないことを実感させられますね。

 時折、噴煙が勢いを増しているように見えると、
「おいおい、今朝はあまり張り切らなくてもいいんだぞ」
 などと山に話しかけたくなってしまいましたよ。
 人間は山を眺めて「きれいだ」と言い、温泉に入って「極楽、極楽」などと喜んでおりますが、その温泉だって、元をたどれば地下深くの地球の活動からいただいているものです。
 美しさと恐ろしさが同居している。それも北海道の自然なのでしょうね。

 ホテルの方によると、一昨日の朝は、それは見事な朝焼けだったそうです。それを聞いてしまったものですから、
「それなら今朝も出るかもしれない」
 と欲を出し、日の出まで待ってみました。
 しかし――。待てど暮らせど、空は知らん顔。 朝焼けらしい朝焼けは、とうとう現れてくれませんでしたよ。
 自然というものは、ホテルの宿泊客の都合に合わせて営業してくれるわけではありません。「一昨日はサービスしましたので、本日は休業です」とでも言いたげな空でした。
 考えてみれば、毎朝浅草で日の出や空を撮り続けているあほまろが、そんなことは誰より知っているはずなのですけどね。

「朝焼けを 待てど空だけ 知らぬ顔 予約のできぬ 自然ホテルか」(阿呆人也)

 さて、今日はとうとう「THE ROYAL EXPRESS」北海道の旅、最終日となりました。その前に、昨日の三日目を振り返っておきましょう。
 昨日は稚内を出発し、ロイヤルバスに乗って、日本海側を南へ向かいました。
 稚内を離れていく車窓の向こうには、天候さえ許せば利尻富士が美しい姿を見せてくれます。北海道の北の果てまで来ると、海も空も道路も、何もかもが東京とは尺度が違いますね。
 道路は延びる、空は広い、海は果てしない。
 浅草なら数分歩けば何かにぶつかりますが、北海道では歩いても歩いても景色しかありません。
 これこそ、あほまろが生まれ育った北海道なのであります。
 途中、稚内副港市場に立ち寄り、お買い物タイムとなりました。

 稚内副港市場には蟹、ウニ、ホタテなど、いかにも北海道らしい海産物がずらりと並んでおりました。ところが値札を見てみると、
「あれ、東京とあまり変わらないんじゃないの」
 というものもありましたよ。
 北海道まで来れば、蟹が向こうから「遠いところをよく来たね」と半値くらいで迎えてくれるのかと思ったら、蟹もウニも世間の物価高をよくご存じのようです。

 そんな中で、ちょっと気になったのが、
「しまえながラーメン」でした。
 北海道の人気者、白くて丸くて可愛らしいシマエナガを名前にした商品なのでしょうが、名前だけを見ると、どうしても余計な想像をしてしまいます。
 するとクルーの方も、
「まさか、シマエナガで出汁を取ったわけじゃないでしょうね」
 と笑っておりましたよ。
 それは困りますよ。あんな可愛らしい鳥から出汁など取られたら、ラーメンを食べながら泣かなくちゃいけませんからね。
 しかし息子は気になったようで、しっかり買い求めておりましたが、あほまろは、お土産は最後に札幌でまとめて求めるつもりなので、ここでは市場見物だけにしておきましたよ。

 買い物の後は、ロイヤルバスで夕日が丘展望所へ。
 ここは利尻富士を望む絶好の場所なのですが、残念ながらこの日は山頂付近が雲に隠れておりました。
「せっかく来たんだから、ちょっとくらい顔を出してくれてもいいじゃないか」
 と思いましたが、山にも都合があるのでしょう。

 その代わり、雄大な景色の中に大迫氏のバイオリンの音色が響き渡りました。 これが実に良いのです。
 広い空、大地、海、雲。そしてバイオリン。コンサートホールのような壁も天井もありません。
 北海道そのものが巨大な音楽堂になったようでした。

 やがてバスは豊富町へ。
 THE ROYAL EXPRESSへの乗車は、宗谷本線の豊富駅からでした。

 豊富町といえば、広大なサロベツ原野と酪農の町。そこでいただいた牛乳とアイスクリームが、これまた美味しい。
 牛乳なのに、まるで生クリームを飲んでいるような濃厚さでしたよ。
 東京で「濃厚」と書かれた牛乳を飲んでも、なかなかここまでの味には出会えません。
 やはり牛乳は、牛のいるところで飲むのが一番なのでしょう。

 そして、豊富駅であほまろが何度もカメラを向けたのが、THE ROYAL EXPRESSを支えてきた機関車でした。

 北海道での運行を陰で支えてきたのが、JR北海道のDE15形ディーゼル機関車です。
 DE15形は、もともと除雪作業にも対応するために開発され、1967年から製造されたディーゼル機関車です。雪国北海道の鉄路を守ってきた、いわば働き者の古参兵なのであります。

。

 THE ROYAL EXPRESSの北海道運行では、そのDE15形を重連にして豪華列車を牽引する姿が、すっかりお馴染みになりました。
 青く美しい客車の先頭に、実用本位のディーゼル機関車が二両。
 決してスマートな組み合わせとは言えないのかもしれません。

 でも、あほまろには、それがたまらなく格好良く見えるのです。
 豪華列車が主役なら、DE15は黙って舞台を支えてきた黒子でしたからね。
 客室では美しい音楽が流れ、料理が運ばれ、乗客が景色を楽しんでいる。その間も先頭では、二両の機関車が黙々と北海道の長い線路を引っ張り続けてきたのであります。
 しかし車齢を重ね、老朽化も進みました。
 七年間にわたって北海道のTHE ROYAL EXPRESSを牽引してきた機関車たちにも、ひとつの区切りが訪れます。
「よく頑張ってくれたな」
 そんな気持ちで、あほまろは機関車の細部までカメラに収めておきました。
 鉄道好きというのは困ったもので、豪華な客車より機関車の台車や連結器を夢中になって撮っていることがあります。
 普通の人にはただの鉄の塊でも、乗り鉄や撮り鉄にとっては、そこにもちゃんと物語があるのですよ。

「北の地を 七年曳きし老兵に 汽笛なけれど ありがとう言う」(阿呆人也)

 THE ROYAL EXPRESS、青い車両もよく頑張りましたね。

 豊富駅を出発します。

 豊富駅を出ると、車内では稚内の樺太食堂さんによる豪華な昼食が用意されました。

 これでもか、というほど北海道の味覚が並びました。
 特に礼文産ウニ。美味しい。確かに美味しいのです。でも、多い。
 東京でウニを注文すると、「もう少し乗せてくれてもいいのに」と思うことがありますが、北海道まで来ると逆に、
「もう十分です、勘弁してください」
 と言いたくなるほど出てくるのですから、人間というものは勝手なものですね。

 昼食後は、しばらく休息時間となりました。普通なら席に戻って、ゆっくり景色を眺めるところでしょう。
 しかし、あほまろがじ〜っと座っていられるはずがありません。

 しかし、あほまろがじ〜っと座っていられるはずがありません。
 今回が北海道におけるTHE ROYAL EXPRESS最後の運行なのです。
「あれも撮っておこう」
「ここも残しておこう」
「この窓からの景色も、もう一枚」
 と、カメラを持って車内を行ったり来たり。

 写真は、今日を明日に残すための記憶です。これまで何十年も浅草の朝を撮り続けてきたあほまろですから、「最後」と聞けば、なおさら記録しておきたくなるのです。
 窓の外には、北海道の大自然が流れていきます。
 牧草地があり、森があり、川があり、小さな駅があり、人家がぽつりぽつりと現れては、また大地の中へ消えていく。
 その景色を、THE ROYAL EXPRESSの窓枠が一枚一枚の額縁にしてくれているようでした。
 この青い車両から北海道の景色を眺めることも、もう無いのでしょう。
 そう思った瞬間、それまで何度も見てきたはずの風景が、急に愛おしく感じられました。

 クルーのみなさんから見れば、
「また、あのおじさん歩きまわっているね」
 と思われていたようですけどね。

 列車は音威子府を通過し、名寄まで走ります。

 懐かしの咲来駅通過。

 THE ROYAL EXPRESSの北海道ツアーでは、沿線のみなさんの歓迎も、大きな楽しみのひとつでした。

 観光列車というものは、線路の上だけを走っているのではありませんね。

 駅で手を振る人。
 沿線から見送る人。
 演奏してくれる人。
 食事を作ってくれる人。
 そして、列車の到着を楽しみに待っていてくれる人。
 そんな人と人との間を走っているのです。

 豪華な車両や料理も素晴らしいけれど、七年間の北海道の旅を特別なものにしたのは、もしかすると、こうした沿線のみなさんの笑顔だったのかもしれません。

 やがて列車は名寄駅に到着。

 名寄駅では大勢の方々とゆるキャラがお餅つきで出迎えてくれました。

 ホームでは、集まってくれた地元のみなさんに、大迫氏による演奏が披露されました。

 バイバイなよろちゃん、七年間ありがとうございます。この青い列車はもう来ませんが、来年からは「赤い星」でやって来るので、よろしくね。

 バイバイ、キマロハ+ヨ。

 名寄駅を出発すると、車内にて本日最後の演奏会は、乗客のリクエスト演奏でした。

 あほまろのリクエストは、毎回、ななつ星のテーマです。大迫氏とは最初にお会いしたのがななつ星でしたからね。

 ぴっぷを通過し旭川駅には昨日のTHE ROYAL EXPRESSの乗車は終了しました。

 しかし旅は、まだ終わりません。
 再びロイヤルバスに乗り、美瑛の丘を眺めながら富良野へ向かいました。
 稚内から日本海沿岸を走り、豊富から鉄道で名寄、旭川へ。そして美瑛を抜けて富良野まで。

 そして富良野リゾートオリカでの夕食。
 最後を締めくくってくださったのも、大迫氏によるディナーショーでした。
 美味しい料理をいただきながら音楽を聴き、今日一日の出来事を思い返していると、朝に見た稚内の海も、利尻富士も、豊富駅も、DE15も、車窓を流れた北海道の大地も、名寄のみなさんの笑顔も、すべてが一本の長い映画のようにつながっていきました。

 みなさん、ありがとうございました。

Memo
Hasselblad X2DII+XCD 4/28V
Hasselblad X2DII+XCD 2,5/55V
Leica M11P SAFARI