令和8年(2026)9月26日(土)  旧暦8月16日 大安
今朝の撮影 Data
Hasselblad X2DII  4/28V 2,5/55V
iPhone 17 Pro Max
現像 Adobe Photoshop Lightroom CC
撮影枚数 XX枚
- 大雪の山々を染めた、北海道の朝 -

「朝焼けに 大雪燃えて 息白し 熊に逢わずで これもまたよし」(阿呆人也)

 今朝のあほまろも、いつもの浅草ではありません。北海道のほぼ中央、上川郡上川町にある「フラテッロ・ディ・ミクニ」で朝を迎えました。
 いつもなら午前四時には雷門の大提灯を見上げ、まだ眠っている仲見世を抜け、観音さまへ向かっている時間です。それが今朝、目の前にあるのは雷門でも宝蔵門でもなく、どこまでも広がる北海道の大地と、大雪の山並みでした。
 旅に出ると、朝というものは、同じ時刻でもまったく違う顔を見せてくれるものですね。空がまだ深い藍色を残している頃、東の空がほんのり明るくなり始めました。
 やがて山の稜線の向こうが橙色に染まり、それが赤へ、桃色へ、紫へと刻々と姿を変えていきます。長く伸びた雲までが朝日に照らされ、まるで誰かが大きな刷毛で北海道の空いっぱいに絵の具を塗ったようでしたよ。
 さすが北海道。空のキャンバスまで桁違いに大きいのであります。

 ところが、美しいものには、たいてい何かしら代償がつきものです。
 今朝の外気温は、なんと3℃。
 東京を出る時には、まだ九月なのだからと冬物のコートなど持って来ませんでした。それが北海道へ来てみれば、暦よりひと足もふた足も先に季節が進んでおります。
「寒い!」
 と言ったところで、大雪山が暖房を入れてくれるわけでもありません。 浅草なら、この程度の寒さでも「歩けばそのうち暖まる」と、いつもの三時間散歩を始めるところですが、ここではもう一つ大きな問題がございます。

 ヒグマです。
 東京では早朝に出会うのは、ビクトリー君やレインボーちゃん、観太郎君におせんちゃん。それに時折、 朝まで飲み続けた酔っ払いくらいです。
 ところが北海道では、草むらの向こうから「おはようございます」とヒグマが出て来ても困ります。こちらが挨拶しても、向こうが朝友になってくれる保証などありませんからね。
 そこで今朝は、いつものようなのんびり散歩は諦め、ヴィラの周辺だけを三十分ほど歩くことにいたしました。

 しかも、なるべく人間が歩いていることを知らせようと、iPhoneから音楽を流しながらの散歩です。浅草では鳩を呼びながら歩き、北海道では熊を遠ざけながら歩く。
 同じ「あほまろの早朝散歩」でも、ずいぶん勝手が違うものですよ。
 それでも寒さを我慢して外へ出た甲斐はありました。
 目の前に広がる草原の向こうには、大雪の山々。その上を朝焼けの雲が大きく流れ、刻一刻と色を変えていきました。山の稜線はまだ黒いシルエットなのに、その背後では空だけが燃えるように明るくなっていく。その対比が何とも美しく、シャッターを切るたびに、さっきとは違う空になっているのです。
 朝焼けというものは、ほんの数分が勝負ですね。
「あとで撮ろう」などと思っていると、「あと」はもう別の空になってしまう。だからこそ、毎朝同じ場所を撮り続けても飽きないのでしょう。
 浅草の朝もそうですが、北海道の朝もまた、二度と同じ朝にはならないのであります。

 周囲には白樺の木々も立っています。
 白い幹が薄明かりの中から浮かび上がり、その向こうには朝焼けに染まった大雪の山並み。足元には秋を告げる赤い実も見つけました。
 北海道の秋は、東京のように「そろそろ秋かな」などとのんびり相談しながらやって来るのではなく、ずかずか入って来るようですね。
 まだ木々の紅葉は始まったばかりで、この辺りが本領を発揮するのはこれからでしょう。

 上川町周辺は、大雪山系を背景にした紅葉でも知られる土地です。これから気温がさらに下がっていけば、山の上から麓へと秋色が降りてくるのでしょう。
 今回は残念ながら、その盛りには少し早かったようです。
 しかし、これほど見事な朝焼けと白樺の景色を見せてくれたのですから、紅葉していなかったことくらいは許してあげましょうね。
 北海道も、あほまろに許されて、さぞ安心していることでしょう(笑)。

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 昨日、あほまろを乗せた「THE ROYAL EXPRESS」は札幌駅を出発しました。列車は急ぐことなく、北海道の景色を楽しみながら進んでいきます。
 札幌から旭川まで、普通なら移動そのものが目的になってしまいますが、ロイヤルエクスプレスでは違います。
 車内でゆっくり昼食をいただき、窓の外を眺め、おしゃべりを楽しみながら過ごしていると、約四時間半という時間さえ旅の一部になってしまうのです。

 考えてみれば、現代の鉄道は「いかに早く着くか」を競っています。
 新幹線なら、一分でも遅れればニュースになります。しかしロイヤルエクスプレスでは、
「そんなに急いで、どこへ行く」
 なのであります。

 目的地へ早く着くことではなく、目的地までの時間そのものを楽しむ。
 乗り鉄のあほまろにとっては、これほど贅沢なことはありません。
 ロイヤルエクスプレスの車内をご覧下さい。

。

 旭川に到着

 旭川から専用バスに乗り換えて、大雪山の麓に位置する上川町へやって来ました。

 そして宿泊したのが、フラテッロ・ディ・ミクニです。
 昨日まで列車の窓から眺めていた北海道の大地の中へ、今朝は自分の足で立っている。それだけでも、不思議な気分になりましたよ。

 大雪山系の十勝岳では現在も火山活動が活発な状態が続いており、気象台では噴火警戒レベル3が継続されているようです。活火山ですから油断はできませんが、あほまろが滞在している上川町のこの辺りは十勝岳から20キロ以上離れております。
 それでも、雄大な山々を眺めていると、この美しい風景もまた、長い年月にわたる火山活動によって形づくられてきた大地なのだと、改めて感じさせられますね。
 昨夕は、その大雪山系が夕焼けに染まる姿を撮ってみました。山の稜線が夕映えの中に黒く浮かび上がり、空は刻々と赤から紫へと色を変えていきましたよ。

 今朝は山の向こうから昇る朝日に見とれ、昨日は沈みゆく夕日に見とれる――。
 浅草では毎朝、観音さまを中心に同じ場所の変化を追いかけていますが、北海道では山そのものが巨大な定点観測の相手になってくれるようです。

 ただし、いくら美しいからといって火山には近づかない、熊のいそうなところにも近づかない。旅先では「もう一枚」が禁物ですね。写真は命あってこそ、なのであります。

 夕食会場です。

 そして今日は、再びバスで旭川駅へ戻り、ロイヤルエクスプレスの旅を続けます。これから向かうのは、最北端の地、稚内です。
 旅はまだまだ続きます。
 この時期の北海道は朝晩の冷え込みが強く、場所によっては一気に冬を思わせる寒さになることもあります。冬物のコートを持って来なかったあほまろとしては、
「北海道さん、もう少し九月らしくしていただけませんか」
 とお願いしたいところですが、北海道にそんな忖度は通用いたしません。

 寒ければ着る。
 熊が怖ければ遠くへ行かない。
 疲れたら休む。
 そして、美しい景色が現れたら撮る。
 それで良いのであります。

 今回の旅は、ロイヤルエクスプレスの北海道での大切な節目となる旅でもあります。だからこそ、ひとつひとつの景色が、いつもより少し胸に残るのでしょう。
 列車の窓から眺める北海道も、早朝ひとりで眺める北海道も、やがてすべて思い出になります。
 そして思い出というものは不思議なもので、その最中には気づかなかった小さな出来事ほど、後になって鮮明によみがえってくるものです。
 今朝なら、燃えるような朝焼けかもしれません。
 白樺の白い幹かもしれません。
 冷たい3℃の空気かもしれません。
 あるいは、熊を怖がってiPhoneから音楽を鳴らしながら歩いたことかもしれませんね。旅とは、名所を見ることだけではありません。
 その土地で、いつもとは違う朝を迎えること。
 それもまた、旅の大きな楽しみなのでしょう。

 以前にも書きましたが、旅が楽しいのは、やはり帰るところがあるからなのですからね。

 昨日は中秋の名月。夜になると、大雪山の稜線の上にまん丸なお月さまがぽっかりと浮かび、北海道の澄んだ夜空を静かに照らしておりました。
 朝焼け、夕焼け、そして名月まで――大雪山は一日の終わりまで、あほまろを楽しませてくれましたよ。

 ただ、北海道まで来たのですから、夜には満天の星が降ってくるような星空も期待していたのですが、残念ながらそれは叶いませんでした。
 中秋の名月があまりにも頑張って輝いていたので、星たちが遠慮してしまったのでしょうかね。月には逢えたけれど星には逢えず――旅というものは、何でも思い通りにならないからこそ、また来たくなるのでしょうね。

Memo
Hasselblad X2DII+XCD 4/28V
Hasselblad X2DII+XCD 2,5/55V
Leica M11P SAFARI