平成17年3月14日 旧暦2月5日赤口

- 大げさの顛末 -



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 ポカポカ陽気の朝になりました。昨日は雪もちらついていたっていうのに、今
年は変な気候ですね。弁天山の早咲きの桜は何度も開こうとしては閉じ、そんな
ことを繰り返し、今朝の陽気でまたまた開きかけていますよ。どうも、思い切り
の良くない桜たちです。まるで優柔不断なあほまろのようにも見えてくるのです
よ。
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 「長屋の花見」って落語をご存じですか。貧乏長屋の大家さんが貧しい店子連
中に気分だけでも人並みの花見をさせてやりたいと考えた花見、お茶をお酒とみ
なし、たくわんを数の子なんて冗談を上野の山で本当にやってしまった連中のお
話です。落語にはそんな貧乏生活がぴったり、聞く方も演じる方も貧乏が染み付
いているからこそ自分に比喩しながらも笑って楽しめるのです。
 昨日、落語家林家正蔵の襲名記念イベントが開催されました。それも上野から
浅草まで延々7キロにも及ぶパレードで、詰めかけた人は約14万5000人(
主催者発表)、10億円の保険をかけたといわれる前代未聞で桁外れの襲名記念
イベントだったのです。
 林家正蔵を襲名するこぶ平の父・故林家三平さんと故石原裕次郎さんの親交が
深かった縁で、石原プロが全面的にバックアップして実現したこのイベント、前
宣伝が上手だったのか、この権利を買ったテレビ局が努力したのかは判りません
が、たかが三流芸能人、それもまともに落語も出来ない落語家の襲名披露にこん
な大げさなパレードが必用だったのでしょうか。
 当の本人が一番それを承知なのでしょう。パレードの最中は泣きっぱなし、ま
た挨拶のマイクを持ってもしばし言葉が出ない状態です。「この御恩は高座でお
返ししたい」、鳴き声で語ったこの一言、パレードを一目見ようと集まった人々
のためにも、これからが本番と思って、立派な落語家と言われるように精進して
欲しいですね。
 浅草演芸ホール前に設置された特設ステージで、締めの挨拶に立った鶴瓶師匠
「甘い世界じゃない。大変さは分かる。お父さんの力でここまで来れたってこと
と、これからもずっと人気を保つのはこぶちゃんの力、人柄、努力や。テレビで
培った“間”を生かし、いい正蔵になってくれ!」と、正蔵の名の重さを訴えて
おりました。
 前代未聞でド派手なイベント、あなた一人の力じゃあり得なかったのですよ。
これもひとえに亡きお父さんと、石原軍団やフジテレビのおかげなんです。
 それよりもなによりも、落語の世界のほとんどが貧乏生活を楽しく送る人々の
噺、10億円の保険をかけたパレードの自慢だけは高座で自慢しないでください
ね。それに、高座の上では常に座布団に座っていなければ、お客さんに失礼にあ
たるってことが落語界の常識だってことも再認識してくださいね。なんたって、
九代目林家正蔵になったのですから。
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 いや〜、昨日は大変でした。別にこぶ平が好きで撮影に出かけた訳じゃないの
ですが、浅草のイベントなのでしかたなく撮影したってのが本音です。今までに
経験したことが無いほどの人出と、もの凄い数の報道陣。いつもなら、雷門前の
出発式を撮影して、仲見世に先回りをして余裕で数カ所撮って帰れるっていうの
に、仲見世から全く身動きがとれない状況だったのです。
 それでもなんとなく泣き面で歩くこぶ平の顔を撮ることは出来たのでしたが、
あまり満足な仕上がりにはならなかった。それより、応援に駆けつけた笑福亭鶴
瓶、林家木久蔵、立川志の輔、柳家花緑、春風亭昇太、それにこぶ平と義兄弟に
あたる春風亭小朝などの師匠連中の表情の方が良く撮れておりましたよ。最も、
彼らばっかり狙ってたってのも本音でしたけどね。
 春風亭昇太師の挨拶で、「沿道で声援を送る人のかけ声に感無量の涙を流して
泣いているこぶ平さんを見ていて、私も感無量になって、笑ってしまいました」
なんて冗談をいって鶴瓶師匠に殴られていたのが今回一番の思い出になったのか
な。大げさなわりには、そんな程度のイベントだったんです。
 やっぱ、落語家は「長屋の花見」程度の襲名イベントじゃなくっちゃ好かれま
せんよ。温室育ちのお坊ちゃん。

今朝の写真
SONY DSC-F828
撮影枚数30枚
昨日のお練り
CANON EOS-1 Ds
撮影枚数291枚
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