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令和8年(2026)10月14日(水)

 今朝は、日の出のおよそ40分前、まだ境内が薄暗いうちにクロちゃんが飛んで来ましたよ。

 突然、暗がりの向こうからこちらへ向かって飛んで来たものですから、あほまろも慌ててカメラを構え、急いでストロボのスイッチを入れて撮ってあげました。

 パッ、パッ、と閃光が走るたびに、暗闇の中からクロちゃんの姿が浮かび上がります。

 翼を大きく広げてこちらへ向かってくる姿、急ブレーキをかけるように尾羽をいっぱいに開いた姿、身体を傾けながら方向を変える姿。こうして写真を並べてみると、普段は一瞬で終わってしまうハトの飛翔にも、実にさまざまな姿があるものですね。

 肉眼では暗くてよく分からなかった羽の一本一本までストロボの光に照らし出され、まるでクロちゃんだけが夜の境内から切り抜かれて飛び出してきたように写っておりました。

 ただし、やっぱりストロボ撮影は難しいですね。

 クロちゃんばかりが妙に明るく浮かび上がって、背景の浅草寺は暗いまま。見ようによっては、クロちゃんが浅草寺の境内を飛んでいるというより、舞台のスポットライトを独り占めしているようでもあります。

 今朝の主役は俺だぞ!

 そんな顔をして飛んでいるようにも見えてしまいましたよ。
 それでも、翼をいっぱいに広げて正面から飛んで来る瞬間などは、なかなか迫力があります。小さなハトでも、真正面からこちらへ向かってくると、ちょっとした猛禽類のようにも見えてしまうのです。

 ところが、そんなクロちゃんの様子を面白そうに見ていた外国人の子どもたちが、こちらへ近寄って来ましたよ。どうやらアメリカから来た子どもたちのようでした。
 最初は少し離れたところから様子を見ていましたが、クロちゃんが人間を怖がらず、あほまろのそばを行ったり来たりしているのが珍しかったのでしょう。やがて恐る恐る近寄って、クロちゃんと遊び始めました。
 子どもにとっては、浅草寺の大きな本堂や五重塔より、目の前をちょこちょこ歩き回る一羽のハトのほうが気になるのかもしれませんね。

 夜明け前にはストロボの光を浴びて、まるで舞台俳優のように派手に飛び回っていたクロちゃんも、朝の光が戻れば、いつもの浅草寺のハトに逆戻り。

 今朝は、隅田のおばちゃんがカメラを持っていたので、あほまろとクロちゃんが遊んでいるところを撮ってくれましたよ。

 ところがクロちゃん、写真を撮ってもらっていることが分かっているのか、隅田のおばちゃんの前でもサービス精神旺盛なのであります。
 翼をいっぱいに広げて目の前を横切ったかと思えば、くるりと方向を変えてあほまろのところへ戻って来る。その飛び方を見ていると、早朝の浅草寺境内を自分専用の飛行場だと思っているようですね。
「はいはい、ちゃんと撮ってるから、もう一回飛んでちょうだい」
 そんな声が聞こえてきそうな朝でしたよ。

 そしてクロちゃんは、大きく翼を広げて着陸態勢に入り、

 あほまろの手のひらへピタリ。

 何度見ても、この瞬間は面白いですね。

。

 こうして写真で一瞬を止めてみると、ハトの翼がどれほど精巧にできているのか、改めて驚かされますよ。

 手のひらに乗ってしまえば、先ほどまで境内を勢いよく飛び回っていたクロちゃんも、急におとなしくなります。

 そこに、「今日はずいぶん早くから遊んでいるじゃないか」
 とでも言いたげに、ハート君とピースちゃんがやってきました。いつもより早く飛び出してしまったクロちゃんを心配して、様子を見に来たのでしょうかね。

 やがて、境内にはビクトリー君とレインボーちゃんも集まりました。

 ハトたちには時計もスマートフォンもありません。それなのに日の出の時刻をちゃんと知っているのですから、人間よりよほど正確なのかもしれませんよ。

 毎朝、ハトたちが待っていてくれるからこそ、多少寝坊をしても、あほまろは毎朝ここへやって来たくなるのでしょうね。

 子雀も見てましたよ。

 帰り道では、久しぶりに観太郎君が待っていてくれましたよ。
 おや、観太郎君じゃないか。最近ちっとも顔を見せてくれなかったので、あほまろは寂しかったんだよ。
「どこへ行っていたんだい」

 そう声をかけると、観太郎君は竹垣の上にとまったまま、知らん顔。

 「別にどこにも行ってないよ。ちゃんとこの辺にいたよ」
 とでも言っているようでした。
 そして観太郎君は、何も答えず、あほまろの先を行くように瓜生岩子さんのところに飛んで行きました。

 観太郎君にとって瓜生岩子像の周辺は、どうやらお気に入りの場所なのでしょう。像のそばにちょこんととまる姿も、もうすっかり見慣れた光景になりましたよね。

 お浅なら、子どもたちのところへ行ったみたいだよ。
 そんな顔をしているではありませんか。

 子どもたちも巣立って、それぞれ自由に飛び回るようになったとはいえ、母親のお浅ちゃんには、いつまでたっても子どもは子どもなのでしょうね。

 人間もカラスも、そのあたりは案外同じなのかもしれません。

 朝の始まりはハト、締めくくりはカラス。
 ずいぶん鳥に忙しい朝になってしまいましたが、これもあほまろの早朝散歩ならではなのでしょう。

 それじゃ観太郎君、また明日。明日はお浅ちゃんも連れて来てね。

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