今朝は、日の出の時刻を過ぎても、いつものビクトリー君たちがなかなか姿を見せてくれませんでした。
いったい、どうしたのかな……
いつもなら、あほまろの姿を見つけると、どこからともなく飛んで来る連中なのに、今朝に限って静かなままです。心配になって境内を見渡していると――なんと、ビクトリー君は本堂の屋根の上にとまって、こちらの様子をうかがっていたのでしたよ。
どうやら、早朝から大勢の外国人観光客がやって来て、賑やかにしていたのが怖かったようですね。毎朝この境内で暮らしているビクトリー君にとっても、人が少ない夜明け前こそが自分たちの時間なのですからね。
もう大丈夫だよ、ビクトリー君。降りてらっしゃい。
あほまろが声をかけると、こちらを確認したのでしょうか。屋根の上から勢いよく飛び立ち、翼を大きく広げて、いつもの棚めがけて一気に急降下して来ましたよ。
「屋根の上 人波避けて 待つ鳩も あほまろ見つけ 羽音でおはよう」(阿呆人也)
おはようビクトリー君。心配していたのはあほまろだけでしたね。
やがてレインボーちゃんもやって来て、いつもの朝が戻ってきました。
おはようレインボーちゃん。
酔っ払ってうるさい連中は帰ってきましましたよ。
毎朝同じように見える浅草寺の朝ですが、ハトたちにとっては、人が多かったり少なかったり、驚くことがあったり、安心することがあったりと、彼らなりの出来事があるのでしょうね。
大勢の人間は怖くても、あほまろの手は怖くないからいらっしゃい。
やっぱりあほまろの手のひらが安心ですよね。
今朝も観光客の少ない境内を行ったり来たりで、いっぱい遊びました。
今朝も楽しかったね。
ちょっと遅れて、ハート君とピースちゃんもやって来ましたよ。
おはよう、ハート君。今朝はずいぶん遅かったじゃないか。
おはようピースちゃん。
あほまろ、いつもの二羽だけではありませんよ。
そう言われて棚の端を見ると、
見慣れない小さなお友達が一羽ついて来ているではありませんか。
ハートちゃん、この子は誰なの?
するとピースちゃんが、ちょっと得意そうな顔をして、
この子は、春に産まれた私の子どもだよ。ようやく大きくなって、一緒に飛べるようになったので、今日は連れて来たのよ。
もちろん、本当にピースちゃんがそう言ったわけではありませんけどね。でも、三羽の様子を見ていると、そんな会話が聞こえてきそうでした。
小さなお友達は、まだ少し警戒しているようで、あほまろとの距離を保ちながら、お父さんとお母さんの後ろをついて歩いております。それでも時折こちらを見つめる目には、「この人が、毎朝お父さんたちが遊んでいる人間なのかな」とでも言いたげな表情がありましたよ。
そして、ハート君とピースちゃんに促されるように境内へ。
まだ飛び方にもどこか若々しさが残っているようですが、翼を大きく広げれば、もう立派な一羽の鳩ですね。
これまで二羽でやって来ていたハート君とピースちゃんが、今日は子どもを連れて三羽でやって来た――。
そう思って眺めていると、毎朝顔を合わせてきたあほまろに、家族を紹介しに来てくれたようにも思えて、なんだか嬉しくなってしまいましたよ。
そして、お母さんの真似をして、あほまろの手の平に乗ってきたのでした。
これでまた、浅草寺の朝に新しい顔がひとつ増えましたね。
さて、この子にも名前を付けなくちゃいけませんね。
この子のからだが真っ黒なので、クロちゃんが良いかな。
それとも、もう少し様子を見て、この子らしい名前を考えることにいたしましょうかね。
みなさん、良い名前を考えてください。
「親鳩が わが子を連れて 朝参り この人だけは 怖くないよと」(阿呆人也)