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令和8年(2026)10月8日(木)

 今朝は、日の出の時刻を過ぎても、いつものビクトリー君たちがなかなか姿を見せてくれませんでした。 いったい、どうしたのかな……
 いつもなら、あほまろの姿を見つけると、どこからともなく飛んで来る連中なのに、今朝に限って静かなままです。心配になって境内を見渡していると――なんと、ビクトリー君は本堂の屋根の上にとまって、こちらの様子をうかがっていたのでしたよ。
 どうやら、早朝から大勢の外国人観光客がやって来て、賑やかにしていたのが怖かったようですね。毎朝この境内で暮らしているビクトリー君にとっても、人が少ない夜明け前こそが自分たちの時間なのですからね。

 もう大丈夫だよ、ビクトリー君。降りてらっしゃい。

 あほまろが声をかけると、こちらを確認したのでしょうか。屋根の上から勢いよく飛び立ち、翼を大きく広げて、いつもの棚めがけて一気に急降下して来ましたよ。

「屋根の上 人波避けて 待つ鳩も あほまろ見つけ 羽音でおはよう」(阿呆人也)

 おはようビクトリー君。心配していたのはあほまろだけでしたね。

 やがてレインボーちゃんもやって来て、いつもの朝が戻ってきました。
おはようレインボーちゃん。

 酔っ払ってうるさい連中は帰ってきましましたよ。

 毎朝同じように見える浅草寺の朝ですが、ハトたちにとっては、人が多かったり少なかったり、驚くことがあったり、安心することがあったりと、彼らなりの出来事があるのでしょうね。

 大勢の人間は怖くても、あほまろの手は怖くないからいらっしゃい。

 やっぱりあほまろの手のひらが安心ですよね。

 今朝も観光客の少ない境内を行ったり来たりで、いっぱい遊びました。

。

 今朝も楽しかったね。

 ちょっと遅れて、ハート君とピースちゃんもやって来ましたよ。
 おはよう、ハート君。今朝はずいぶん遅かったじゃないか。

 おはようピースちゃん。

 あほまろ、いつもの二羽だけではありませんよ。

 そう言われて棚の端を見ると、

 見慣れない小さなお友達が一羽ついて来ているではありませんか。

 ハートちゃん、この子は誰なの?

 するとピースちゃんが、ちょっと得意そうな顔をして、
 この子は、春に産まれた私の子どもだよ。ようやく大きくなって、一緒に飛べるようになったので、今日は連れて来たのよ。
 もちろん、本当にピースちゃんがそう言ったわけではありませんけどね。でも、三羽の様子を見ていると、そんな会話が聞こえてきそうでした。

 小さなお友達は、まだ少し警戒しているようで、あほまろとの距離を保ちながら、お父さんとお母さんの後ろをついて歩いております。それでも時折こちらを見つめる目には、「この人が、毎朝お父さんたちが遊んでいる人間なのかな」とでも言いたげな表情がありましたよ。

 そして、ハート君とピースちゃんに促されるように境内へ。

 まだ飛び方にもどこか若々しさが残っているようですが、翼を大きく広げれば、もう立派な一羽の鳩ですね。

 これまで二羽でやって来ていたハート君とピースちゃんが、今日は子どもを連れて三羽でやって来た――。

 そう思って眺めていると、毎朝顔を合わせてきたあほまろに、家族を紹介しに来てくれたようにも思えて、なんだか嬉しくなってしまいましたよ。

 そして、お母さんの真似をして、あほまろの手の平に乗ってきたのでした。

 これでまた、浅草寺の朝に新しい顔がひとつ増えましたね。

 さて、この子にも名前を付けなくちゃいけませんね。

 この子のからだが真っ黒なので、クロちゃんが良いかな。

 それとも、もう少し様子を見て、この子らしい名前を考えることにいたしましょうかね。

 みなさん、良い名前を考えてください。

「親鳩が わが子を連れて 朝参り この人だけは 怖くないよと」(阿呆人也)

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