____________________________________ 霧雨がぱらつくちょっと肌寒い朝です。玄関を出た途端の寒さでくしゃみが止 まらないのです。モモちゃんもそんなあほまろを心配そうに見上げて歩いていま したよ。こんな寒い朝でも、衣替えを済ませた小学生たちは半袖で元気よく通学 していく姿を見てまたくしゃみが・・・。 6月に入って、夏服に衣替えをした街では半袖姿の人が目立つようになりまし たね。お巡りさんもバスガイドもコンビニの店員までが涼しい格好で働いていま す。この姿が当たり前になる頃にはもっと薄着が欲しくなっているのかな。 ------○------ その昔、たとえ例年より早くに衣更えの時期がやってきても、その頃もまだ寒 さが続いていたとしても、今とは違って几帳面に衣更えの日を守ったそうです。 なんてのは高貴な方々の風習ですが、我々一般庶民は衣更えなんかしたくてもで きなかったようです。年がら年中着たきり雀、同じ着物を冬は綿を入れて仕立て 直し、熱くなると綿を抜いて着たのです。 そんな風習、ついこの間まで行われていたように記憶しております。我が家も 葛籠のような箱に綿が仕舞われており、衣更えの時期になると祖母が庭で乾燥さ せ、着物の裏地と表地の間に薄く綿を入れて使っていました。 着物(和服)は、耐久消費財のようなもの、どこの家でも何度も洗い張りや仕 立て直しを繰り返して、大切にしていたのですね。また、晴れ着は母から娘へ、 娘から孫へと、代々受け継いだのです。それは今でも変わらない風習でしょう。 あほまろの母の着物は妹が一人で全部持っていってしまいました。それって、別 にどっかの相撲部屋の常識を知らない兄弟とは違って、兄妹三人の家族がちゃん と話し合って、“着物は娘が持っていくほうが母も幸せだろう”って決めたので す。妹には娘が二人居るので、いつまでも母の着物を受け継いでくれることでし ょう。 衣更えの時期になると、あほまろはいつもそんなことを思い出してしまうので す。知らず知らず身に付いてしまった春夏秋冬の風俗史なのでしょう。 ------○------ 昨日、6月大歌舞伎の初日を観劇してまいりました。今回は友人夫婦もご一緒 です。桟敷席なのでちょっとした宴会気分、いつもの観劇では絶対に口にしない ビールを飲みながらの観劇でしたが、眠気も起こらず楽しいひとときを過ごして まいりました。 先月までの三ヶ月間は中村屋の大看板襲名興業で超混み合っていたのですが、 今月から通常興業です。中村屋の襲名興業には様々な評価が飛び交っていますが 、興業なので木戸銭が入れば劇場としては成功なのでしょう。正直言ってあほま ろの評価はちょっと厳しいのですけど、あえてここでは書きません。 本当に観たいお芝居が観られる幸せを感じるのは、演目と配役がイメージと一 致した時なのです。あほまろにとって、今月はそれが実現する月なのです。演目 は、通し狂言「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」、特に今回は四世鶴 屋南北生誕二百五十年としての興業です。 鶴屋南北が、あの名作「東海道四谷怪談」を書き上げた十日後に出来たといわ れるこのお芝居、なんとなく四谷怪談の続編のようでもあり、はたまた「仮名手 本忠臣蔵」の一節でもあるような。吉右衛門、仁左衛門、時蔵など今の歌舞伎界 で最も適した俳優陣で繰り広げられる痛快な鶴屋南北のそれもハチャメチャな世 界なのです。 このお芝居、前回は二年前に同じ歌舞伎座で幸四郎、菊五郎、時蔵で観劇した のですが、主役の薩摩源五兵衛は幸四郎さんのイメージでは無かったような消化 不良が今回に期待を持たせてくれたのでしょう。 残忍で自己中な人間でも、主君に使える忠義心を貫き通すことで許される、そ んな物語。江戸時代の山東京伝の戯作にも似た痛快な皮肉の精神と、目を覆いた くなるな愛憎劇が混在する歌舞伎の中の大傑作、当時の大衆演劇なのです。 なんとなく、今、日本批判をしている中国の「愛国無罪」の精神にも重なるよ うな偏った忠義心(愛国心)も感じてしまいました。 ------○------ お芝居とは、現実世界ではあり得ない物語に心がひかれていく世界なのです。 役者の中に、自分を比喩しながら物語の展開にワクワクしているのです。そんな お芝居の世界で、歌舞伎は横綱級と評価されているため木戸銭がバカ高いので、 なかなか庶民の楽しみとはいかないのが現実です。 それにひき替え、大衆演劇も捨て置けない存在だというのを知ってますか。浅 草には木馬座と大勝館という二つの常設演劇場があります。その他、ゴロゴロ会 館や浅草公会堂でも時々浅香三千代さんなどが出演するお芝居が開催されるので す。 お芝居の内容は歌舞伎と全く同じ、というと異論もあるでしょうが人の心を引 きつけるのは、かえってこっちの方がより鋭いのかも知れません。それに木戸銭 は歌舞伎の十分の一って手軽さ、一日通しで観ても特別興業以外は1500円で 観られるのです。みなさんも浅草で大衆演劇でも観ませんか。
今朝の写真 CANON EOS-KissDN,CANON ZOOM 17-85 F4-5.6 IS 撮影枚数28枚 ____________________________________