平成16年(2004)11月6日 土曜日

- 都会の緑 -

 天気予報では日曜日まで秋晴れの晴天が続くなんていってましたが、今朝はど
んよりと曇った朝になってしまいました。気温も低くて寒いのか、モモちゃんの
尻尾が下がりっぱなしでした。
 深まった秋、山々では紅葉の便りも聞こえてきます。しかしここ浅草で唯一自
然を感じさせてくれる伝法院のお庭には紅葉の木は無く、銀杏などの広葉樹が黄
色く色づくだけです。そんな光景を見て秋を感じる・・・、都会の暮らしの中で
自然を求めるってのは難しいってことなのでしょうね。
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 でも、江戸から明治期の東京ってのは大都市で有りながら多くの自然が残って
いたのですよね。その様子は当時書かれた様々な文学からも知ることができます
。そもそも東京の人口が増加した遠因は大正3年に始まった第一次世界大戦によ
る軍需景気なのです。特に急激な人口の増加がみられたのは大正6年からなので
す。しかし戦争の終了によって景気は一気に後退、軍需景気が東京により人を集
め、それまで自然がいっぱいだった緑地を潰して住宅地にしていくのでした。
 その頃に鍵のかかる共同住宅、いわゆるアパートが誕生したのです。それ以前
の下宿屋とは異なるアパートは、現在のものに比べればかなり貧弱でしたが、そ
れでも鍵は下宿人にプライバシーをもたらすものであり、内と外との区別が戸の
鍵によって明瞭に区分けされていたのです。
 鍵のかかる最初の共同住宅としては上野倶楽部(下谷区上野花園町)で、明治
43年に開業しています。木造五階建てで約60戸、部屋は六畳または八畳一間
が大部分で、便所と浴室は廊下を介して共用でした。入口は洋式風のドアで、内
側からはしっかりと鍵がかけられプライバシーが守られていたのです。
 今日はそんなアパートが誕生した「アパート記念日」でもあるようです。江戸
川乱歩の小説の中にも、アパート「東栄館」として登場するのも、この「上野倶
楽部」がモデルとなっています。新築と言っても安普請で、二段の押入があり玄
関には鍵が掛かるという点がそれまでの下宿屋とは大きく異なる・・・、そのよ
うな紹介だったような。  
 同じく宇野浩二の「夢見る部屋」にも、「東台館」という名前で妻のある主人
公が隣で暮らす女性を思いながら夢想にふける・・・、ちょっと奇異な小説にも
登場しております。これもカギという道具がもたらすプライバシーがもたらした
物語なのです。
 そんな便利で快適な住宅によって、東京から緑地がどんどん消えていったので
しょうね。今日の「アパート記念日」の裏には、そのおかげで消えていった、東
京の緑地の嘆きも見え隠れしているようでもあります。
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 浅草寺境内の菊花展もいよいよ終盤を迎えます。今朝は、展示された総ての菊
花の評価が下がりました。あほまろが毎朝見続けてきた大懸崖がなんと、「優等
主席」に選ばれております。でも、写真でもお解りの通りまだ咲いていない花や
不揃いの花もいっぱいですよ。菊の蘊蓄書によると、大懸崖とは見事に咲きそろ
った菊花が見所・・・、そんなこと書いてましたけどね。でも、今年はこれだけ
大きい懸崖は一個だけだったので、努力賞ってことなのかもね。
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 一昨日は、新潟の被災地にボブサップとアケボノが出向き、小千谷小の校庭で
炊き出しを行ったことがテレビで報じられておりました。テレビでは被災に逢わ
れた方々が喜んでいる様子が写し出されておりましたが、その実態はなんと、マ
スコミサービスだったような・・・。
 実際に彼らが炊き出しを行っている場所には報道陣のカメラが取り囲み、主催
者が用意した極々少数の被災者が演技のように炊き出しを受け取っていたのだと
か、中には受け取りかたが悪いと、NGを出されてやり直していたお婆ちゃんも
いたそうです。そんな内容が被災地の現状を伝える掲示板に書き込まれておりま
したよ。
 そういえば、テレビのニュースでも、写されるのはボブサップとアケボノだけ
でしたね。これって被災地にとってありがたい行為だったのかな・・・。

今朝の写真
SONY DSC-F828
撮影枚数35枚