平成16年(2004)10月3日 日曜日

- 寒い雨の朝に -

 寒さで目覚めた雨の日曜日です。何故かくしゃみが止まりません風邪をひいた
訳でもないのにちょっと憂鬱な感じです。いつも一緒に寝ているポニーちゃんも
珍しくあほまろの身体にぴったりとくっついて寝ています。いよいよ秋らしくな
ってきたのでしょうね。
 雨が降ろうが・・・、モモちゃんとの散歩は欠かせません。モモちゃんにとっ
ては雨なんてのは全く関係なく、どっちかというと喜んで濡れているようです。
ずぶ濡れの状態を写真に撮ろうと近づくと、突然身体を揺すってしぶきを飛ばす
のです。おかげで身体もレンズもずぶ濡れ。そんな様子をモモちゃんは喜んでい
るかのようでしたよ。そんな訳で、今朝の写真は雷門前で、ちょっと離れて撮り
ました。
 日曜日だっていうのに、今朝の境内には訪れる人も無くとっても静かでした。
秋の観光祭で奉納された提灯だけが、まるで夜明けの行灯のように薄ぼんやりと
灯いている歯抜けの提灯、なんとなくうら寂しくも見えわたるかな・・・。これ
でも、昨日よりちょっとは増えているのですよ。この調子で、来月までにはもう
少し賑わってくるのでしょうね。
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 “冴えかえる春の寒さに降る雨も 暮れていつしか雪となり 上野の鐘の音も
凍る 細き流れの幾曲り・・・”、昨夜は河竹黙阿弥晩年の傑作「雪暮夜入谷畦
道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)」を観てきました。あの有名な「直侍」で
す。黙阿弥が特異とした白浪物、七五調で流れるように語る名調子はまさに江戸
情緒を今に伝えているのです。
 菊五郎の直侍と、時蔵の三千歳は初顔合わせです。たしか前回の三千歳は福助
でした。あほまろは、このお芝居の好きな場面はなんといっても入谷大口屋のい
わゆる濡れ場、新造たちが、惚れ合った二人に“御しげりなんし”と声をかけて
去っていくと大向こうからは、“たっぷりと!”、“待ってました!”の掛け声
が。
 “一日逢わねば千日の 思いに私ゃ煩ろうて 針や薬のしるしさえ 泣きの涙
に紙濡らし 枕に結ぶ夢覚めて いとど思いの増鏡・・・”、まるで浮世絵を鑑
賞しているかのように決まるお馴染みのポーズに、思わずあほまろも、“音羽屋
!”、自然に出てくる褒め言葉。
 この作品は、明治14年、再び戻らない若き日の限りない郷愁から、滅び去っ
た世の美しいものを再現させたといわれる河竹黙阿弥の名作なのです。明治もこ
の頃になると日本にも西洋の文化がどっと押し寄せ、歌舞伎芝居も過去の遺物と
なりそうな時代だったようです。
 西洋の日本蔑視を改めさせるには、日本の文化が西洋並みに高いことを示威す
る必要があると、古い文化を切り捨て西洋風の社交クラブ鹿鳴館をオープンさせ
たのもこの頃でしたね。
 鹿鳴館のオープン当日は西洋風の衣装に身を包んだ六百人の紳士・淑女が集ま
り、軍楽隊が西洋の吹奏楽を演奏。貴族たちは慣れないダンスに興じたそうです
。でも、ここに集まった人々の雰囲気は西洋人から見るとやや失笑するようなも
のであったとか、その反面、黙阿弥のように日本の伝統を重んじる人々からは眉
をひそめられたともいわれています。
 いつの時代も、新しさを見いだす連中によって文化は創られていくのでしょう
。古い物をいつまでも守ることだけを思っていちゃいけないのかも知れません。
新しい時代の新らしい文化の中にも、日本古来の文化を臭わせておかなければい
けないのです。
 “蕎麦屋なんぞで 天や玉のぬきで飲むのも良いけれど・・・”
 そんな素敵な言葉を、今でも、もっともっと使ってみましょうよ・・・。少な
くてもあほまろは、歌舞伎座から帰る途中だけは、いつも主人公に成りきってい
るんですよ。これも、伝統文化を保存したい者としての努力なのかな。

今朝の写真
SONY DSC-F828
撮影枚数34枚