吾輩はハトである。名はまだない──だが、群れの中では背のV字で知られ、人間どもからは「ビクトリー君」と呼ばれている。

今や境内に暮らす鳩は二十羽ほど。だが、人間に目を向け、犬友と並び、写真機に収まるのは吾輩だけだ。他の鳩たちは遠巻きに餌をついばむふりをしながら、実のところ吾輩を睨んでいる。

その視線に込められているのは、羨望と嫉妬と、わずかな悪意。

「どうせ犬に媚びて餌をせしめているのだろう」
「なぜあのV字ばかりが写真になるのか」
「人間に近づけば、いつか痛い目を見るに違いない」

ふむ、実に人間臭い。いや、君らはむしろ人間そのものだ。

浅草の仲見世に並ぶ店もそうであろう。隣の店が客を集めれば羨み、値を下げれば舌打ちする。観光客どもも同じだ。

揃って雷門で写真を撮りながら、「わが一枚こそが最も美しい」と信じて疑わぬ。挙句の果てには、写真機を構える人間同士が「立ち位置」で小競り合いまで始める。

しかし、吾輩は群れに沈まぬ。羨望の視線を背に浴びながら、ひとり空へ舞い上がる。嫉妬の羽音がどれほど響こうとも、それを風に変えて翼を広げればよい。
まったく、鳩も人間も群れに生きる限り、嫉妬からは逃れられぬらしい。

結局のところ、舞台の中央を占めるのは常にただ一羽──吾輩である。

──これぞ嫉妬を超えた勝利、これぞ吾輩ビクトリー

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