東京寄席さんぽ十月中席

 あれは忘れもしない十一月のいつのことだったか(忘れとるやないけー!←お約束のツッコミ)、読者の皆様、寄席で出っくわす知人友人の皆様にせっつかれて、一か月遅れで十月上席の「さんぽ」を書いたのが、昨日のことのようである、という文章を書くうち時制がメチャクチャなっていることに気が付いたが、もう書き始めてしまったからしかたがない。

 とにかく。その遅れに遅れた前回の「さんぽ」から数えても、ずいぶんな歳月、じゃなか年月、じゃなくて日数がたってしまった。思えば、はるかな日々…。

 懐かしがっている場合ではなかった。思考回路を十月中旬にあわせねばならない。

 あのころ僕は何をしていたのだろうか?そうだそうだ、護国寺で矢来町の通夜があったんだ。んでもって、翌日帝国ホテルで三遊亭歌彦の司会と太田その&柳家ごん白の出囃子付き結婚披露宴があって、その翌日に末広亭の禽太夫の披露目に行って、一日置いてまたまた末広亭で文左衛門、三太楼の披露目の連荘……。沈んだり弾んだりの、不安定な日々だったんだなあ。

 そんな毎日を過ごしていれば、当然のことだが、本業の案件がたまりまくりになっている。披露目が浅草に入ったのをいいことに(?)、十一日から土日も含めてあくせく仕事に精出した。

 どっと疲れた週明け、しかし五日も寄席園芸から遠ざかっていると右鎖骨のあたりがうずうずしてくるというのは同類の方々も納得していただけると思う。ウズウズは左わき腹かもしれんが。

 とりあえず、落語会ならなんでもよかった(ゴメン)のだが、「東京かわら版」で選んだのは職場からのアクセスがいい上野広小路亭。立川流の定期落語会である。広小路亭も立川流もほーんとに久しぶりである。前はよく通るんだけどね。

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 10・15(月)

 <立川流夜席>(上野広小路亭)

 談大:平林

 志遊:だくだく

 ブラック:ぞろぞろ

 文都:壷算

  仲入

 談生:山号寺号

 左談次:真田小僧

 ぜん馬:蔵前駕籠

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 たまにしか見ないので、立川流の前座は、だれがだれだか、まったくわからない。「家元」系のファンには「立川流関連しか見ませんっ!」という凛々しい方々が多く、そういう方と話していると、前座を香盤順に全部言えたり、「今度二ツ目になるのは誰か」なんて話題で魚民あたりで一晩盛り上がれちゃったりするのね、これが。しかし、行動範囲が寄席中心で、立川流、円楽党はあわせてやっと「つばなれ」かなーというワタクシとしては、えらそうなことはいえません。謙虚に高座を受け止めたいと思いつつ、一種独特の閉塞感がある広小路亭の畳席の座椅子に身をうずめるのでありました。

 前座の談大も、もちろん初見だ。太目なわりにソフトな声で、お行儀のよい高座ぶり。その分、はじけた元気いっぱい感がないようだ。「平林」のできは可もなく不可もなくだが、手紙の宛名を繰り返し連呼するくだり、「平林さん、平林さん」と「さん付け」なので、リズムが悪い。ここは素直に「平林~平林~」で行きたいな。

 無事サゲまでいって本業(?)に戻った談大、いきなりメクリの紙をどさっと落としてしまった。あせってしまってワンワンワワン、なかなか紙が元に戻せない。落語が終わってほっとした心の隙。読者諸氏も他人事と思わず気をつけませう。

 「ええー、本日の出演者、私と談生以外は、みんなインドから帰ったばかりなんですよね」が、志遊の第一声だった。そうだそうだ、立川談志家元が関係したインドツアーに、一門の主だったものがお供についていったんだった。テロだとかなんだとか、海外旅行がヒジョーにヤバイ時節なのに、もっともやばそうなインド、パキスタン方面に行っちゃうってんだから、いかにも家元らしいが、付いていく弟子たちは大変だよね。幸い一人の犠牲(?)もなく帰国したようだが、小さなトラブルは結構あったようだ。「五日ほど前に帰ったばかりなんですよ。だから今日は疲れてて期待できません(きっぱり)」と状況説明する志遊の顔がうれしげだ。インドのエピソードは先輩たちに譲って、居残り組の志遊は、矢来町の思い出をマクラにした。

 「亡くなった志ん朝師匠とは、所沢、鎌倉と、二回仕事を一緒にさせてもらいました。師匠が楽屋入りするとパッと明るくなるんですよ。(急に表情を翳らせて)談志が楽屋に入ってくると、重苦しくなるんです。アタシ、思うんですけど、『スター・ウォーズ』のフォース・オブ・ザ・ダークサイドって感じなんですよー」

 「だくだく」の、絵に描いた家具しかない家に忍び込んでくる間抜けな泥棒が、「近眼乱視緑内障白内障網膜剥離で、その上片目は義眼」という設定がスゴイ。

 お次はブラック、朱色の着物にピンクの羽織で登場だ。

「我々が無事帰ってきたんで、(居残り組の)談之助が悔しがってねー。行かなかった筆頭が文字助でしょ?その次が談之助なんですよ。文字助はあんなんだからね、『インドでもし事故でもあったら、俺が談志だ』って思ったんだって。『月光仮面の談志』の夢がついえたって…」

 ぎゃはははは。「月光仮面」の変身は、談之助の十八番だもんなー。しかし、ブラックの声も表情も心なしか精彩がない。疲れているのかなあ。

 「みなさん、行かなくて幸せ。インドなんかつまんないですよ。町中クラクションがなりっぱなしだし、埃だらけだし、カレーばっかり!それも、カツカレーとかカレー南蛮なんてないんですよー。もう六泊七日カレーですもん。朝六時にモーニングコールが鳴って七時に出発!芸人のスケジュールじゃないですよ」とこぼすこぼす。

 インド組二番手は文都だ。

「ツアーの費用が二十四万五千円。今回は家元が払ってくれるという…。上納金から持ち出したらしいですよ。ま、かつてはオウムもみんなで行ったんですから、立川流がそろっていったからっておかしくないですよね。ま、今回、狙われているのはアメリカ人ですから、ブラックさんとは、なるべく離れて歩くようにしてました。1ルピーが2、65円でね、里う馬がキッタナイ店で10ルピーで水買ったんですよ。で、次の日、ホテルでのたうち回ったんですわ」

 マクラは面白かったが、文都も本題に入るとペースダウンしてしまった。明らかにつかれているのだ。高座のどよーんとした空気が、客席にも流入してきたらしく、仲入休憩時には、こっちもなんだかくたびれてしまった。そうだ、俺も疲れているんだった。

 「こないだあった板橋の小学生誘拐、身代金五百万円とりっぱぐれ。板橋のときわ台って、キウイの地元だんですよー。あの手際の悪さから考えると…」

 ネタの「山号寺号」、トントンといいテンポだが、幇間と「山号寺号ごっこ」をする若旦那が、談志家元そのままじゃん。

 いつも覇気のない左談次だが、この日はさらに元気がない。疲れた口調でインドをおちょくるのである。

 「映画、踊ってましたねー。言葉はまったくわかんないけど、内容は完璧にわかるという…。いかにインド人のレベルが低いかわかりますね。踏み切りは時間通りに下りるが、電車は時間通りにこない。帰ってきたら、とたんに体調崩して、今ヒジョーにキビシイ状況です。おなかゴロゴロですからね。そーっと噺やって…。ちょっと大きな声出すと、アブナイです。この後の、ぜん馬というのもキビシイ状態です」

 で、ネタは「真田小僧」。ほんとにそーっとやっていた。

 「このやろ金坊、そんな口きくと、口の中にタンソ菌放り込むぞ!」

 言葉はすごいけど、ささやくような口調なのね。おかしー。

 トリは「キビシイ状態」のぜん馬である。

 「おなかゴロゴロのうえに、クーラーで風邪ひいて、こんな声になっちゃって」

 真っ黒な顔して、ものすごい鼻声。「蔵前駕籠」の江戸っ子の啖呵がたそがれていた。久々の寄席で元気回復といきたかったが、いまひとつ盛り上がらないまま、はねてしまった。ま、状況が状況だから仕方がない。もしインドで何か起こっていたら、この会自体が、なりたたないもんねー。しかたがない、明日も寄席に行こうっと。明日できる仕事は、あさってでもできるさ。締め切りやばいけど。

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 10・16(火)

 <昇太ムードデラックス>(下北沢・本多劇場)

 清水宏:ケータイ注意

 昇太:前説

 小田原丈:公家まっしぐら

 昇太:ろくろ首

  仲入

 柳昇:雑俳

 昇太:寝床

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  ここのところ、昇太といえば、古典ばかり聴いている。というより、古典をやる時をよって通っている。昇太の新作スピリットをフィルターにした古典落語は、ちょっと他では味わえない。その分、最近の新作に「これは!」という感じの飛びぬけた作品が見当たらないような気も…。新作より古典の方が面白い新作落語家。なんだかよくわかんないところが、昇太らしいのである。

 そういえば、この「ムードデラックス」というのもよくわからない会だよね。「ムード」とか「デラックス」という語感と、昇太の芸風に、どう考えても共通点が見当たらない。ネタも古典やったり新作やったりと、行き当たりばったりだし。

 昇太の会のオープニングはたいてい、本人による前説である。今日もへんてこな中国服で出てきたかなと思ったら、あれれ顔が違うー。よく見ると、昇太ファミリーの怪優・シ清水宏ではないか。

 「ケータイテンワ、アレ、トテモヨクナイ!オトガテルモノナラシタラ、ワタシ、タダデハオカナイヨ!」

 姿形も言葉も、とっても怪しいけど、言ってることはけっこうまとも。コント風にまとめた「開演前の諸注意」でありました。

 清水が引っ込んで、昇太が出てきた。

 「えーっ、会が終わったら、関係者は『ふるさと』に集合のこと」

 こっちは、前説風にまとめた業務連絡だったりして。

 本日のゲスト、小田原丈が「わたしはですねー、昨日(出演を)頼まれたんですよ。メクリもないんですからねー」とぼやいている。きっと誰か他のゲストを頼んでいて、ドタキャンがあったに違いない。

 「でも今日は、昇太師匠から、『ぜひアレやって!』って頼まれてて、ネタ指定なんですよね」

 昇太が初めて聞いて驚愕したネタとは何か?題名がわからないので、リストにはテキトーに書いておいたが、確かにこれはすごい!のである。

 最近ペット事情、といったマクラから、すっとネタに入って。小学生同士のペット自慢が導入だ。

 「あんたんち、何飼ってるの?」

 「犬」

 「猫」

 「アンタは?」

 「……」

 「何飼ってるのよー」

 「おれさー、公家飼ってるんだよ」

 「クゲって何?」

 「だからさ、京都なんかにいる」

 「実はねー、あたしんちも公家飼ってんの」

 「えーっ!君んち、どんな公家?」

 「扇町三条」

 「扇町!すげーじゃん。おれんちは、姉小路だよー」

 なんだこりゃー。公家をペットにするなんて発想は、フツーの常識ではまず絶対にでてこないよね。小田原丈、すごいっ、えらいっ!とまあ、はじめは感心していたのだが、筋を追っていくうちに、むむむむむむむ。公家のセリフはいいかげんだし、途中UFOが出てくるあたりから展開がよれよれになってきて、クライマックスは見事な尻切れトンボ。あの奇想天外な発想を生かすだけの構成力が、小田原丈にはまだ身についていないのだ。もったいないよー。

 客席の欲求不満の視線を背に受けながら小田原昇太が高座を下りると、昇太が小走りに登場だ。

 「ねー、みなさん、すごい話だったでしょー」

 にこにこしながらも、昇太はずいぶん刺激を受けているようだ。

 「ムードデラックスはねー、こんなもんじゃなかったんですぅー。砕け散るような力!いかに狂うか!今、私はどんどんお上手になっている!」

 意味不明のアジテーション。勢いをかって本日最初のネタ「ろくろ首」に入った。

「おじさんおじさんおじさんおじさん、話を聞いてくれーーーーーー!」

連呼しつつ与太郎が、おじさんにつかみかかる。何の話かと思えば、「アタシもお嫁さんが欲しいーーーーーーーー」である。

 「与太郎、お前、今年でいくつだ?」

 「四十二」

 ぶはははは。これって、昇太の実年齢じゃん。以降、この「四十二歳」が何度も出てくる。「ろくろ首」は、テキストどおりのオーソドックスなものだったが、勢いがあって、しょーもないギャグでも笑わされてしまう。

 「ふと横を見ると、お嬢さんの首が伸びて、行灯の油をなめるんだ」

 「それ、もしかして、砂かけババア?」

 「ろくろ首だ!」

 仲入をはさんで後半戦。そういえば開演前に、スタッフのY氏から「今日はねー、小田原丈はともかく、後半はビッグなゲストを用意してますからねー。意外な人選、というわけではないけど、見たらうわーっと思いますよー」といわれていたのだった。見たらわーっと言うようなビッグなゲスト。だれだろう。もしや小泉首相? なわけないなーと思いつつ期待していたら、でてきたのが春風亭柳昇!うわーっ。

 ネタは、柳昇流ナンセンスのきわみともいえる「雑俳」だ。

 たんよりも 少しきれいな つばきかな

 JR 目白の次は 池袋(昔は「国鉄の」だった)

 青空や あなたの財布は シジュウカラ

 あああ、面白くて何のためにもならない。いいなあ。

 「『雑俳』は私が(柳昇)師匠に習った二つのネタのうちの一つなんですよー。もう一つは『元犬』ね」と、うれしそうな昇太。「凝るものは違っていても、ものに凝る、という状況は今も昔も変わりません」なんてマクラをふって、「寝床」に入った。やや口慣れていない感じがするが、いつもながらの面白さ。特に前半、長屋を回ってきた繁蔵と、義太夫狂いの旦那のやり取りのテンションの高さは、昇太ならではである。

 一席終えて、汗を拭く昇太。

 「『寝床』は、今まで四度かけようとしてダメだったネタなんですよ。構成がうまくいかないの。このままではずーっとやれないと思って、今日かけてみました。次は『富久』をやります。……、どれだけいい気になってるかわかるでしょー。志ん朝師、汗の拭き方がカッコよかったですねー。でも僕は、うちの師匠のように、好き勝手な事をして死んでいきたい。あっ、生きて行きたいだ!どういっても、もう遅いですね」

 終演後、下北の今風のお店を避けて、北沢食堂で、ゴマ和え、野菜炒め、なめこおろしなど、小鉢だくさんの定食を食べながら考えた。好きなことだけして生きていけたら、それはそれは楽しいはずだ。苦労が人を大きくする。人間は苦労してこそであるって、よく言われるけど、、好きなことだけして生きていく方が、実は大変な事なんだよね。昇太さん、いつまでもヘラヘラしていてね。

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 10・20(土)

 <極楽戦士ゴカイダー>(なかの芸能小劇場)

 喜助:徳ちゃん

 駒七:大工調べ

 雲古大夫・鶴澤津賀寿:壺坂・合邦

  仲入

 雲助・佐助:山崎屋(通し)

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 久しぶりの中野なので、ちょっと早めに家を出た。新三郷から武蔵野線で武蔵浦和へ。埼京線に乗り換えて、新宿に出て、中央線で中野へ。いやー、中野は遠い遠い。

 土曜日の遅い午後。JR中野駅の改札を出ると、四十代後半ぐらいか、着飾った女性のグループがかなりのコーフン状態でしゃべっている。高校か大学の同窓会の待ち合わせなのだろう。一人やってくるたびに「きゃー、ひっさしぶりー!」と大騒ぎ。あまり楽しそうなので、思わず足をとめて話を聞くような聞かないような素振り。と、一段と派手な女性が集団に近づいた。「うわー、○○ちゃんだー」という声にこたえて、先客一人一人とハイタッチをはじめた。

 一人目にタッチ。「かわってなーい」。

 二人目、再びハイタッチ。「かわってなーい」

 三人目、またまたハイタッチで、「ぜーんぜんかわってない」

 四人目にハイタッチした後、一拍あって「変わった?」

 ひえー。思わず本音が出たのでしょう。「変わった?」といわれた女性が「なにいってんのよ、きょうは髪型がこうで、化粧がああで、と懸命に言い訳している。横で聞いてて、おかしいやら可哀想やら。もうこれだけで、一遍のコントになっている。笑っちゃまずいと、あわててその場を離れたので、「変わった」女性の顔を見ることはできなかったが。

 「北上夜曲コンクールと岩手県物産展」をやっているサンプラザ前を通り過ぎ、中野ブロードウェイのキッチュな本屋「タコシェ」をひやかして、ようやくなかの芸能小劇場に到着した。

 さて、今夜は、なにやらマニアなにおいがプンプンする雲助一門会。会場は満員である。

 喜助の手堅い「徳ちゃん」、ちょいと一本調子な駒七の「大工調べ」のあとが、すごかった。雲助そっくり(?)の雲古太夫が、津賀寿師匠の三味線で、あやしい義太夫を語りまくる。この日のスペシャル芸として、一門がそろって稽古を始めたものの、一人減り二人脱落し、残ったのは総帥・雲助ただひとり。ということで、雲助ワンマンショーになってしまった、ということらしい。

 で、「壷坂」と「合邦」。これがなかなかのものなのだ。雲助のあの胴真声、さすがに高音は苦しいようだが、見事に義太夫節になっている。二番目の「合邦」は、アンコに川柳川柳直伝の「ジャズ息子」(それもフリージャズ版)を入れる凝りようで、楽しい楽しい。落語の会だということを忘れるような、興奮の義太夫ナイトになった。すごいー。

 ちなみに雲古太夫の読みは「くもこだゆう」。「別の読み方をしたら、絶対出演しない」と津賀寿師匠にきつく言われたらしい。

 後半は、雲助、佐助師弟による「山崎屋」の通しである。前半部分、いわゆる「よかちょろ」は、雲助が楽しみながらやってるのが伝わってきて、こちらの気分もうきうきしてくる。ちょっと声がかすれているのは、さっきの義太夫のせいだろうか。

 後半は、佐助の力演が光った。大ネタでも何でも挑戦するのはいいが、「意余って」という感じがなきにしもあらずだった佐助だが、この夜の「山崎屋」には感心した。若旦那然とした佐助の風情と、柔らかな語り口が、地味だが品の良い噺としっくりきていた。佐助の得意ネタになる予感のする、けっこうな出来だった。

 終演後、顔見知りの何人かと、ちょっと一杯という話になり、飲み屋街をうろうろ。シックな雰囲気の「あぶりや」という店が満員で、しかたなく芸人が良く使う「おれんち」に入ると、隣のテーブルに、さっき会場であった顔が何人か。「奇遇だねー」なんて話をしていたら、ありゃりゃ今度は雲助一門がぞろぞろ入ってきた。「あぶりやで断わられて、ここに来た」って、まったく我々とおんなじじゃん。すぐ後ろに出演者がいるから、悪口は小声で。「雲助師匠、また義太夫やってー」「そお?そんなに良かったかな?」と、落語の話はほとんどせず、もっぱら義太夫談義に終始した不思議な夜が更け、僕は見事に終電に乗り遅れた。

 

つづく

 


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