
ナナちゃんおはよう。鳥居の下でヒロちゃんがお出迎え。

最近ね、あほまろの知り合いの落語家が、朝っぱらからぶつぶつ呟きながら、歩いているんだよ。

ナナちゃんも仲見世でそいつに逢ったよ。立川談奈って奴で、今度、蔵前神社で「元犬」をやってもらいたいと思っているんだよ。

ヒロちゃん、落語って聞いたこと無いんだけど、楽しいのかな。

そりゃ楽しいよ。蔵前神社でナナちゃんがモデルの「元犬」って噺を聞かせてもらったよ。ドラちゃんなら知ってるよね。

えぇ〜、東京がまだ江戸と申されている頃、道具屋がおりまして、掘り出し物を安く買っては高く売っておりやした。

そんなある日、ちと立ち寄ったお店に猫が3匹おりました。その猫がとても高価な「えこうらいの梅鉢」の茶碗でご飯を食べているのです。猫にこんな高価な茶碗でご飯をくれるってのは、店の主人は価値に気づいてないな。よ〜し、これを買ってひと儲けするか。
おい、おじゃじ、この猫を三両で売ってはくれないか。それと、猫は茶碗が変わると食べなくなるから、この茶碗ももらっていくよ。

冗談じゃありませんぜ。この茶碗は猫よりも高価なもの。それじゃ、何でそ猫の茶碗なんかにしてるんだ。
実は、この茶碗で猫に餌をあげると、たまに猫が三両で売れるんです。

きゃ〜、おもしれぇよ!それ落語ってやつなんだね。

あっちでクロちゃんも聞いて笑ってるし・・・。

その噺は、クロちゃん何度も聞いて知ってるから、他の噺も聞かせてよ。

ぶつぶつ独り言を言いながら、歩いていた立川談奈って奴が話していたの、ヒロちゃん覚えているよ。

あるところに、とてもあわてん坊な男がいました。その男、お風呂に入る時にうっかりして、頭巾と足袋を脱がずに入ってしまったんだよね。
それを見た宿屋の番頭が注意したんだよ。

これ、そこの旅人。風呂に入るなら、足袋びを脱ぎなされ。男は言われてようやく、足袋を脱ぎ忘れた事に気づいたんだけど、今さら脱ぐのも恥ずかしい。

おい、おまえさんは知らないのか、江戸じゃ足袋は滑り止めだ!

そうですかい、それならその頭巾は、何のためにかぶっているんだい。
こ、これはな・・・、湯ぶねの上から水が落ちてくるので、こいつで頭を守ってるんだよ。そんなあわてものは、いつの時代も多いようですね・・・。

あるお殿さまの家来に、大変気のきく三太夫という男ががおったそうじゃ。おかげでお殿様も大満足、朝起きると、すでに洗面の用意が出来ておる。そして顔を洗っている間に、茶をくんで来てくれる。たばこを吸いたいと思えば、目の前に、すーっと煙管が出てくる。手紙を書こうと思えば、スズリと紙が、すーっと出る。
いやはや、これほど気がきく男はないわいな。

ところが、ある日の事。お殿さまが朝起きると、どうも気分がすぐれん。
ああ、頭が痛い。それに寒気がする。
・・・はて、この様な大事な時に、三太夫はどこへ行ったのじゃ、三太夫、これ三太夫・・・。

はは・・・、三太夫これにございます。
そちは、朝からどこへ行っていたのじゃ。はい、夕べから殿のお顔の色がお悪く見えましたので、医者を呼びに行ってましりました。そうかそうか、よく気がつく奴よ。さすがじゃの・・・。
それからお殿さまは、四、五日、医者の薬を飲んでおりましたが、病気はいっこうに良くなりません。
ああ、今日は特に気分が優れないわ。三太夫は、どこへ行ったのじゃ、三太夫、三太夫・・・。そこに三太夫が帰って来ました。

これ、三太夫、そちはどこへ行っておったのじゃ。医者でも呼んでくれたのか。
いいえ、殿のお命も幾ばくかと察し、お寺に行って葬式の準備をしてまいりました。

落語を噺すドラちゃん、たいした猫だよね。

ナナちゃんだって、落語のネタの銅像になるんだから。練習してみたら。

蔵前神社で、ナナちゃん像の建立式が、6月5日だから、それまでに小話でも教えてもらおうかな。

鯛釣りをして、小判五十両も釣りあげたと喜ぶ人の自慢話を聞いた八五郎。さっそく釣り竿を担いで、鯛釣りにでかけたのさ。

舟を沖に出して釣り糸を垂れるとすぐに、大きくて立派な鯛がかかったんだよ。それなのに八五郎、針を抜くと、ええぃ、お前に用が無いと、ぽいと海に放り投げた。ばかだね・・・。
この噺、わかるかな・・・、ヒロちゃんにはわかんないだろうな・・・。と、つぶやきながらチロちゃんそそくさ行っちゃった。

え、ど〜して八五郎は海に放り投げたんだ。

大きくて立派な鯛なら、何両かで売れるのに・・・。

そこまで考えてもまだ分からないなら、ヒロちゃんには一生考えていても分からないってことだよ。

いじわる、そんなこと言わないで、意味を教えてよ。

ま、ヒロちゃんが大人になったら、分かるかも。まだまだ修行が足りないね・・・。

ちぇ、ヒロちゃんだって絶対に落語を覚えてやる。立川談奈さん、今度ヒロちゃんにも小話を教えてちょうだいね。

という訳で、今日も時間となりました。明日また教えてあげるかならね・・・。

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