○口入れ屋

  耳慣れない言葉であろう、口入れ屋はいわゆる人材斡旋業と 
 いうか人材派遣会社といった方が判りやすいであろう。しかし或
 者は人さらい人買いなどとも呼ばれ、大手を振って歩ける商売で
 はなかったとの記述も存在する。江戸初期から存在するこの口入
 れ屋は、当初地方から江戸に流れて来た身分の不確かな者の保証
 人となり、職場を斡旋、稼ぎの一部を身元保証料として徴収する
 のを本職としていたのだが、享保期頃からは、地方の百姓を騙し
 安い値段で娘を買い、吉原や岡場所(もぐりの売春宿)に預け、
 その水揚げ料ほとんどをピンはねしていたごろつきなのである。
  しかし、中には真面目に人材を発掘し武家や商家に斡旋してい
 た口入れ屋も居た。又、豪商の娘の嫁入り先を世話するなど、い
 わば便利屋的存在でもあったのだが、いつの世でもそれらの背後
 にはやくざがはびこり、特に岡場所の権利関係からトラブルが続
 出、幕末には完全に裏の商売と見られていた。