○暴飲暴食合戦

  世界中で行われている暴飲暴食合戦。           
 高知県では一升の酒を3秒足らずで飲み干す男、岩手県では、わ
 んこ蕎麦三百杯食べ干す女性等々、豪快な暴飲暴食の話題は今も
 マスコミを賑わす。                    
  江戸期も同様、特に完熟期に入った文化・文政年間は盛んにそ
 れを競った記録が多く存在する。              
              
  文化十四年(1817)、柳橋の万八楼で開催された大酒大食
 会の模様を紹介しよう。                  

  「本大会は酒組、菓子組、飯組、鰻組、蕎麦組の五組に分けて
 競う、ただし食する費用は自己負担、胃袋に自信のある者、見た
 き者は昼四ツ(約十時頃)柳橋の万八楼に集まられたし」との張
 り紙が江戸市中に張り出された。まったくばかばかしい決戦であ
 るが、いつの時代にも物好きはいるものだ、この決戦に百名程の
 挑戦者と千名を越える見物客が押し寄せたそうだ。      

 さてその結果は

 ○酒組の一等賞は鯉屋利兵衛(30才)三升入りの大盃で六盃半
  一斗九升五合も飲み干した。               
  利兵衛は飲んでいる途中で倒れたのだが、しばらくたって目を
  さまし、茶碗で水を十七杯も飲み干したという。      
 ○菓子組                         
  丸屋堪右衛門(56才)                 
  饅頭五十個・羊羹七棹・薄皮餅三十個・茶十九杯      
  伊予屋清兵衛(65才)                 
  松風煎餅三十枚・饅頭三十個・鴬餅八十個・沢庵五本    
  
  この様な結果が記載されているが、優勝者の商品の有無、自己
  負担の費用等の記載は無い、当時の酒は今よりも高く、文化時
  代は一升約120文程度と推測される、それから計算するとこ
  ろ鯉屋利兵衛は二千三百四十文(約半両)支払い名誉を得た事
  になろう。                       
   現代では指定された量を平らげたら無料という店も見かける
  が、無理は禁物、暴飲暴食合戦は逸話の中だけで楽しもうでは
  ないか。