○江戸の大火

 当時上方で語られる江戸名物といえば「伊勢屋稲荷に犬の糞」こ
れは、江戸の町は伊勢屋を号する商店が多く、道端至る所に稲荷社
が奉られ通行人から賽銭をまきあげる、おまけにそこらじゅう犬の
糞だらけで全く変な所だと噂されていた。しかし当の江戸ではそん
な噂はお構いなし、それ以上に江戸の庶民が恐れていたのは「火事
と喧嘩は江戸の華」なのであろう。狭い敷地に人口が密集するだけ
に、江戸は火事が多く、ほとんど毎日のように発生していた。その
中でも歴史に残る大火と呼ばれる規模のものが九十回を越える、そ
の代表的な大火を紹介しよう。                
 
江戸三大大火

 ◎ 明暦の大火(明暦三年・1657)           
   俗称振り袖火事。江戸城をはじめ市中の六割を焼き、焼死者
   十一万人。江戸期最大の火事であった。         
 ◎ 明和の大火(明和九年・1772)           
   目黒行人坂の大円寺より出火、おりからの強風にあおられて
   千住まで焼きつくす。                 
   この火事は年号からしゃれて「明和くの火事」と呼ばれた。
 ◎ 文化の大火(文化三年・1806)           
   丙申の火事と呼ばれる。                
   芝で出火し浅草方面までを焼きつくす。         

   その他の大火                     

 ○ 天和の大火(天和二年・1682)           
   八百屋お七の放火で「お七火事」ともいわれる。     
   八百屋お七の悲恋物語は後に芝居と成って今に語られる。 
 ○ 元禄の大火(元禄十六年・1703)          
   小石川の水戸屋敷から出火したため           
   「水戸様火事」といわれる。              
 ○ 安政の大地震(安政二年・1855)          
   大地震のため江戸各地三十ケ所から同時に出火した。