2003年9月24日 水曜日


今朝の写真
SONY DSC-F707
撮影枚数29枚

繁栄と衰退

 午後から雨の予報が出ている、とって
も寒い朝になりました。日光の中善寺湖
では、氷が張ったというニュースが、こ
の寒さに拍車をかけているようですね。
 浅草で最も浅草らしい場所というと、
「花やしき」周辺でしょうか。今でも、
戦後のどさくさに紛れた闇市を彷彿させ
る雰囲気の衣料品屋さんや、怪しげな飲
食店が残っています。この辺りは、明治
時代は、幸田露伴の小説「五重塔」の舞
台にもなった、浅草で一番賑やかな繁華
街でした。また、ちょっと先には、江戸
時代からの見世物小屋を集めて出来た六
区興行街。大正、昭和にかけて活動写真
や浅草オペラ、軽演劇の観客でにぎわい
、エノケン、ロッパら幾多の映画スター
や喜劇人を育てた場所なのです。
 戦後、戦災の荒廃から立ち直った現在
の浅草にも、江戸情緒と下町の人情味は
健在だったのですが、昭和31年の「売
春防止法」によって、吉原という赤線地
帯が廃止されたのをきっかけに、その繁
栄も衰えていったのです。
 来月から、華やかだった頃の浅草を再
現し、往年の賑わいを取り戻そうと、「
奥山風景」が開始されます。このイベン
トには、元禄のころから小屋がけの店が
並んだといわれる浅草寺門前商店街の再
現や、見世物小屋の復活を楽しめるので
すが、それは観音様を中心にした狭い一
角だけの催しなのです。
 浅草の町並みには、まだまだ往年の賑
わいを感じさせる建物が残っている場所
も存在しております。また、そんな一角
には、不粋な波鉄板で覆われた浅草寺所
有の空き地も多く存在しております。作
り物の繁華街も良いのですが、このよう
な場所で、現実の町並みと、融合するよ
うなイベントの方が、もっともっと往年
の浅草を偲ぶことができるようなイベン
トが成り立ちそうですね。
 今日は、江戸八百八町の防火の神様と
して有名な、港区の愛宕神社で「出世の
石段祭」が行われています。昨夜は、愛
宕神社の男坂の急坂を三基の神輿が駆け
上がる様子がニュースで流れていました
。都内でも珍しい輪島塗りの六角神輿が
86段の石段を勇壮に駆け上がっており
ました。
 江戸開幕400年の今年は、愛宕神社
にとっても御創建400年にあたり、そ
れを記念して例年よりもお祭りがスケー
ルアップ。今日の大祭式では、記念大祭
の衣冠束帯、十二単姿の特別奉仕などの
古式に従った行事が展開されるそうです
。広重の錦絵、「江戸名所百景」にも、
その様子が描かれていますね。
 この愛宕神社も、普段は訪れる人も少
なく、ひっそりと佇んでいる神社なので
すが、宗教的な行事を臭わせないような
イベントに仕上げることで、観光客を集
めようと、さまざまな催しが開催される
ようです。どこの観光地も、衰退に拍車
をかけたくないと必至に考えているよう
です。
 江戸時代は良かった。もう一度江戸時
代の賑わいを取り戻したい・・・。しか
し、そんな時代に生きていた人は誰も居
なくなってしまったのです。もし、江戸
時代の人達が、今の歓楽街を見たとした
ら、絶対にこっちの方が良いって言うに
決まっているのです。
 時代に相応しいイベントが、新しい観
光地を創り上げるのでしょう。テレビド
ラマで、今まで誰も気にしていなかった
、ごく普通であったはずの場所が、突然
変身してしまうように・・・。